2010年11月27日土曜日

公開講座「子どもの安全のためのデザイン」

子どもの安全のためのデザイン
−病院の傷害データから「キッズデザイン」を考える−
 
生活環境学科が中心となり、産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究セン
ターの西田さんをお呼びして、標記の公開講座が開催された。大変面白く、かつ
楽しい、そして為になる会となったので、少し報告 したい。
 
私の息子がストーブに触れて火傷をしたとき、看護副婦長をしていた叔母に妻が
言われたこと、「そんなの、母親の責任だよ。」は、今のところ evidenceがな
いようだ。見守りによって事故が減るというデータはないというのである。私自
身の感覚としても、見守っていても気づいたとき には手を出すのが間に合わな
い。したがって、見守りの効果というのは、実はいつも見ているということでは
なく、見守る中から危険を予測してそれを 予防する措置を取るかどうかである
と思う。
 
見守りの効果が小さいとすると、環境をどうにかしなくてはならない。デザイン
の出番である。では、どういうデザインにすればいいのか。それを考え るに
は、データがいる。わざわざ怪我をさせて観察するわけにも行かないだろうか
ら、どういう場合にどんな怪我が起きるのかのデータを集めるには病 院の協力
がいる。それで、西田さんは病院からデータを集めるためのシステム構築をし
た。そうすると、自転車が倒れたときに頭部を強打して骨折する ことが多いと
いうようなデータが集まり、ヘルメットをかぶらせる効果が大きいことが明らか
になってくる。
あれ、デザインの話ではなくなってきた。そう、デザインではなく、制度や教育
でも解決に近づけることが可能だ。
洗濯機の上に子どもを置いて入浴の準備をしている間に子どもが落ちたなどとい
う事故もそれなりにあるのだそうだが、これなどは、ドラム型の洗濯機 にせず
とも、そういう情報を親に提供して注意を促してもいい。
 
※3Eと言うそうだ
Education:教育
Enforcement:法律
Engineering:製品・環境改善
 
実はデザインの話もあり興味深かったのだけれど(螺旋階段のある階段の内側に
手摺りをつけることによって掴める場所を作るだけでなく、登る経路を 外側に
することによって傾斜を緩やかにするという実践。蒸気の温度を下げて排出する
炊飯器の開発など)、会場で問題意識として得られたことを3つ 話をしよう。
ひとつは情報の提供。一般の人にとってデザインというのはファッションのこと
であって、プロダクトのことではないという話が会場から出た。そうい う興味
のない人にどうやって情報を発信していくか。インターネットの活用や知識を伝
達できる人材の育成の話が出てきた。
もうひとつは、できることをやろうということ。雨の日に事故が多いからと言っ
て、天気は変えられない。生後12ヶ月頃に誤飲が多いからと言って成 長は止め
られない。ならば、制御可能な変数を変更することを考え、そのためのデータを
集め、3Eとして役立てようということ。
3つめに、経済効果も考えようということ。事故が後遺症として残れば、就業機
会を失い、医療費や介護費用の負担(もしくは介護による就労機会の喪 失)に
繋がり、大きな損失となる。何もしないことは、目には見えない損失を放置する
ことという論は説得力があった。
 
関連サイト
子どもの傷害予防カウンシル
http://www.cipec.jp/index.html

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