2009年10月30日金曜日

右肩下がりの街

午後に建築会館で会議があったのだが、ちょうど新宿あたりでお昼ご飯を食べれ
ばよさそうだった。西武新宿線を利用する私には食事の種類ごとにいくつかなじ
みの店がある。ラーメンならここ、スパゲティならここというように。今日はカ
レーが食べたい気分だったので、トコトコと歩いてカレー屋を目指した。
カレー屋の入っているビルの前まで来て唖然とした。店がなくなっていたのだ。
うーん、不況の煽りか。
 
私は混雑が嫌いで、B級グルメだから、そこそこの値段で満足のサービスを受け
られる店が好みだ。今、そういう店は減少しつつあり、もっとお金は掛からない
が品もないという店が増えつつある。新宿を歩くと、そういうことを感じる。
 
経済が傾いてくると、必然的にそうなってくる。ニーズに合わせて街も変化する
のはしょうがないのかもしれない...などと考えていてふと気づいたのが、そ
うすると街並みがガタガタになるのではないかということだ。高級店ほど不況の
影響を受けるとすると、高級店がなくなって、大衆的な店に変わっていく。右肩
上がりの時は、こぎれいな店が増えていき、あるテイストを持つに至った街。そ
れが右肩下がりになると、下品な店が街並みに埋め込まれていくことになる。い
や、なぜかそういうところに進出してくる店は下品なことが多い。
 
街並みの調和というのは脆弱で、ちょっとした外乱でガタッと来てしまう。それ
が確実にやって来つつある。
そのことを感じて、少し暗い気持ちになった。
 

2009年10月19日月曜日

本の紹介「腹八分の資本主義」

はじめての書評である。
 
一言。読んでみることをお奨めする。
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悲観しているだけでは何も変わらない。
目を凝らせば、日本の中にも希望はあるものだ。
出生率を劇的に向上させた長野県下條村、「あるもの探し」で活気を取り戻した
宮崎県児湯郡、社員と地域の幸せを徹底的に追求し続ける伊那食品工業…。
共通しているのは、社会を蝕む「強欲」を退け、お金には代えられない価値を守
り続けていることである。
画期的な取り組みを続ける地方を訪ね、「日本のこれから」を考える。

第1章 出生率2・04はどうして実現したのか—長野県下條村
第2章 「あるもの探し」で地域は活性化する—宮崎県児湯郡
第3章 林業が栄えれば水源も守れる—長野県根羽村
第4章 超高収益を実現した障害者企業、サムハル—スウェーデン・ストックホ
ルム市
第5章 企業と農村の幸せな結婚—岩手県住田町、北海道赤平市、千葉県富里市
第6章 腹八分の資本主義—長野県伊那市
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資本主義というよりヒューマニズム。収入よりしあわせ。システムより、その背
景にある心。
 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%95%A0%94%AA%95%AA%82%CC%8E%91%96%7B%8E%E5%8B%60
 

モノクロとカラー 〜長倉洋海写真展より〜

「微笑みの降る星 長倉洋海写真展」を見た。
〜ぼくが出会った子どもたち〜という副題が付いていることからわかるように、
世界中の子どもたちの写真が集められている。以前、長倉氏の故郷である釧路で
開催された展覧会のポスターを見て、気になっていた。それが、生活文化学科の
入口で招待券を発見し、その翌日だったか、開催の日本橋三越に行く用ができた
ので、立ち寄ってみたのだ。
 
子どもの写真に訴える力があるのは、その笑顔を守ってやりたくなるからであ
り、悲しみを引き起こす現実を変えてやりたいからだ。何かしたくなるほどの魅
力を子どもの表情・振る舞いは備えている。彼の写真は、そういうことを捉えて
いる。
 
ただ、ここでは別のことを書く。モノクロの写真群に添えられていた詞書き。 
 
「作者によると、カラーはその場の空気感を伝えることができるが、モノクロは
空や土、服の色などの雑多な情報をカットすることで人間の表情を際だたせる。
また、表情に迫ることで遠くの人だと思わせずにより親近感を持たせることがで
きるという。」
 
ちょっと、考えてみたくなるテーマである。
 
※メモは、あまりに汚い字で読み取りが難しかった。細かな差異があるかもしれ
ない。ご容赦を。
 

2009年10月17日土曜日

旅は発見!

 
今春、学生とヨーロッパに行った。帰国も近づいた頃、ある学生がしゃべったこ
とが印象に残っている。
 
「外国に来ると、普段、何気なくやっていることができるだけでうれしいんです
よね。「切符が買えた!」、「食事を頼めた!」そういうことで感動しちゃう。」
 
これには、すごく素直に共感した。そう、日頃やっていることって、実は大変な
ことなのだよね。それができるって、感動に値することなんだよね!
 
私が今までで一番うまいと感じた料理は、高熱で3日間寝込み、何ものどを通ら
なかった後で食べた塩で味付けただけのおかゆ。本当にうまかった。
 
旅は、絶食と同様の効果があるらしい。
だから、旅に出てしまうのではないでしょうか。
 
前回のつぶやきに対するりくうおさんのコメントを見て、そんなことを考えました。
 

2009年10月14日水曜日

もう一度訪れたくなる街

オペラハウスとハーバー・ブリッジの写真ばかり撮った。ものにならなかったが。
 
AIC(国際色彩学会)のあったシドニーで、義理の弟にあった。彼にはオースト
ラリアでの仕事があり、たまたま滞在日程が重なったのだ。
オーストラリア人と話をすることのある彼は、私の知らないことをいろいろ話し
てくれたので楽しかったのだが、シドニーで何処に行くべきか訊ねたときには、
「シドニーは何も見るところがない。だからリピーターがいないんですよ。」と
いう、たぶん日本人の現地スタッフの発した言葉を紹介してくれた。
学会が終わった後、街を歩いてみたが、確かに「もう一度来たい!」と思わせる
ところではない。上海と同じで、「これなら東京でも買える。」という感覚にな
るのだ。つまり、似たり寄ったりのサービスを享受できる街ということだろう。
オーストラリア人はフレンドリーだということは当たっている気がする。物価は
高いし、飯もさほどうまくはないが、特に大きなマイナスではない。安全面は、
割といい気がする。でも、それくらいでは、もう一度訪問しようという気にはな
らないのだな。
 
そう考えてみると、もう一度訪問しようと思わせる場所は、相当な力を持ってい
るということになる。
それで、どんな街ならもう一度訪問したくなるのか、自分にとっての基準は何か
を考えてみたのだが...。食べ物がおいしいことは、重要な気がする。「食」
は、旅の大いなる楽しみだ。次に文化。絵を見たり、音楽を聴いたり、そういう
ことをしたい。それと居心地。街の雰囲気とでも言おうか。街歩きが楽しい必要
がある。ちょっとした風景に和んだり。ぶらぶら歩いていて、何となく心地いい
感じ。最後に、人。フレンドリーな感じ、親切な感じ、人懐こい感じ。そして安
全。とまあ、こんなところか。

国で言えば、イタリア、スペイン、ベルギー、トルコ、フィンランドあたりがも
ういっぺん行ってみたい。都市でいえば、ヴェネツィア、フィレンツェ、ザルツ
ブルク。日本の街で言えば、京都、金沢あたり。2回以上訪れたことがあるので
割り引かれるが、福岡や熊本なども好み。あと、北海道。
都市ではないけど、カプリ島やクロアチアのアドリア海沿岸も良かった。
 

色と関係する言葉

AIC(国際色彩学会)に行った折、Colour Society of Australiaのチラシが配ら
れました。そこに掲載されていた言葉。

Light(光)
Hue(色相)
Chroma(彩度)
Iridescent(玉虫色にきらめく)
Discord(屈折)
Refraction(反射)
Harmony(調和)
Pigments(顔料、色素)
Translucence(半透明)
Tint(色合い、ほのかな色、白の添加による色の変化)
Monochromatic(単色の)
Wavelength(波長)
Energy(エネルギー)
Transparent(透明な)
Matt(つや消しの)
Radiant(放射する)
Sheen(光輝)
Fluorescent(蛍光性の)
Shade(黒の添加による色の変化)
Tone(トーン、色調)
Pastel(パステル)
Dye(染料、色素)
Colour Primaries(原色)
Flare(フレア、ゆらめき)
Achromatic(無彩の)
Gloss(光沢、つや)
Contrast(コントラスト、対比)
Opaque(不透明な)
Luminous(光を発する、輝く)
Spectrum(スペクトル、可視波長域)
Saturation(飽和度)
Patina(表面のつや)
Nuance(ニュアンス、色合い)

2009年10月8日木曜日

「粋」について

臥龍山荘は建物内部は撮影できなかった。庭のあたりから。
 
 
「臥龍山荘」を訪れて
 
ちょこちょこ読んでは挫折を繰り返している「作庭記」の解説本がある。私とし
ては、庭造りの奥義が知りたいわけだが、読む前に何となく予想したように、そ
のような記述はない。形式とその分類が書いてあるだけだと言ったら言いすぎだ
ろうか。庭師でもある著者の言にも、解説があって初めて伝わる内容だというこ
とが書いてある。形式は記述してあるが、その意味合いは先輩庭師と仕事をしな
がら、教えを受けながら体得していくもの、また、そうでないと体得できないも
のとして捉えられてきたのだと思う。
 
「臥龍山荘」は、愛媛県の大洲にある。河内寅次郎という実業家が川沿いの景勝
の地に設けた3,000坪の館だ。一度訪れたいと思っていたのは、そのロケーショ
ンと建物の造りに魅了されるものがあったからである。
親切な受付の女性が見所など説明してくれ、楽しめたのだが、その説明は例えば
次のようなものである。
・春は花筏、秋は菊水というような透かし彫りの題材
・その透かしの見え具合の室内位置による変化
・床の間の一枚板の豪勢さ
・普通と違う、凝った廊下の木の継ぎ方
・飾り釘
・廊下を支える柱の足下は、礎石の形に合わせて柱を削っている
・飾り棚が雲、丸障子を通して入る光が月と見立てたので、違い棚の向こうに掛
け軸が掛かっている
 
こういったことのいくつかは、解説を聞かなければ見逃してしまう事柄であろ
う。だから大変ありがたかったのだが、一方で、良さを説明できないもどかしさ
も感じるのだった。つまり、こういった説明は、おしゃれとは金を掛けることで
あり、しゃれっ気を示すことだという内容になっていて、なぜそれが人の心を打
つのかという造形の質を説明してはいないのだ。
 
たまたま「デザインの生態学」という本を読んでいて、プロダクトデザイナーの
深澤直人が質感とかデザインとかを感じ取るより仕方がないものとして語ってい
たような記憶がある。(今、探してみると、見つからないのだが。)
どうも、経験を重ねて感じ取るセンスを磨くよりないらしい。
つまらない結論だ。何とか打破したい。
うーん。
 
作庭記の解説本・・・図解 庭師が読み解く作庭記、学芸出版社
後藤武・佐々木正人・深澤直人著 デザインの生態学、東京書籍
 
 

2009年10月6日火曜日

日本ファッション業界の可能性

国際色彩学会のお昼休み、S先生と話をした。
繊維関係が専門のS先生は、「日本はもったいない」と言う。素材では世界一。
生地の分野でも世界一。原宿のストリート・ファッションは、世界のファッショ
ン界がそのトレンドに注目する。ヨーロッパやイタリアのブランドには日本の素
材や生地がたくさん入り込んでいる。それなのに、ブランドとして世界に発信で
きていない。もったいない。そうおっしゃるのである。
 
その意味ではユニクロに可能性があると思う。「品質が良くて低価格」というの
は、ニッチであるように思うからだ。しかし、海外研修旅行の添乗をしてもらっ
ているSさんは、海外では「品質が良くて低価格」は求められていないのだと言
う。安い物は品質が悪くて当たり前。だから、品質を求めるならお金を払う。別
にそれで不都合はない。
 
だからこそ、ニッチなのだと思う。うまく宣伝できれば、「品質が良くて低価
格」が当たり前にできる可能性がある。そうすれば、「品質が悪いが安い」を駆
逐できる可能性がある。そういう時には、ノウハウを持っているところが強い。
 
そういうノウハウは、何もユニクロばかりが持っているわけではないだろう。
丹羽さん、イトーヨーカ堂の衣料部門を独立させて、国内に独立店舗も作り、ブ
ランドとして海外にも展開するというのはどうですか?