2010年9月30日木曜日

書評:配色事典














栗皮色と花浅葱、青朽葉に浅紅

配色事典、青幻舎
 
副題に「大正・昭和の色彩ノート」とある。日本色彩研究所を創設した画家、和
田三造が収集編纂した348の配色(2色配色120点、3色配色 120点、4色配色
108点)を掲載している。
 
2色配色を見ると、くすんでいる。赤・黄・緑・青・紫というような最高彩度の
色はほとんど使用されていない。それがある落ち着きと侘び寂びのよう な感覚
を与える。
意外に同系色相や類似トーンの組み合わせばかりではない。ひとつには、明度差
のある配色であれば調和感を生み出すということがあろう。しかし、栗 皮色と
花浅葱、青朽葉に浅紅というような色相差がある組み合わせが多いのには驚く。
これらの配色からはあるセンスを感じるが、万人には受け容れら れないものだ
ろうと思う。

3色配色になっても、傾向は変わらない。明度差を活かしながら、最高彩度の明
るい色などの明清色は余り含まない。そして、色相は驚くほど変化が付 いてい
ることも多い。和田は、そこここの色彩・素材の切れ端を収集していたとあるか
ら、彼のお眼鏡にかなった配色がそういうものだったということ だろう。
 
ここまでは、そのセンスに納得する部分がある。しかし、4色配色はあまり納得
できないものも多かった。基本としては、2色の間に2色を挟み込んで いるの
だが、2つの2色ペアといった風情で、結局分離しているように見える、など。
現実のデザインというのは、こういう4色の使い方はあまりしないのではない
か。もっと別の配列・構成があるのではないか。そういう思いが一つ。4 色以
上になると、グラデーションもしくはトーンの統一・色相の統一といった共通性
を持たせないと調和しないのではないかという仮説じみた思いが一 つ。
 
そういう本でした。

2010年9月28日火曜日

萌える風景

通勤路の途中に、取り壊し中のマンションがある。周囲の住宅に気兼ねして
か、中央部から壊し、周壁に至るようだ。その方が、音の問題が発生する期 間
が短く済むのだろう。
 
その風景を撮影してみた。萌えるのである。

「地図に残る仕事」というコピーは、どこの建設会社のものだったか。
「地図を変える仕事」もなかなかだと思いつつ、「新しいマンションが建つだけ
なのだろうなあ。」との疑念は消えず。

はかない風景をもう数日、楽しむことにしよう。

2010年9月18日土曜日

景観に関連した施策の評価基準

建築学会ので聞いたお話。景観関係のパネルディスカッションだった。
途中から入ったので曖昧なのだが、公共的なイベントをやるときに、4つのポイントから評価して実施するかどうか決めるという。

(1)経済的な効果
 イベントをやることで、地域にどれだけお金が落ちるか
(2)宣伝効果
 そのイベントがさまざまなメディアによって伝えられることで、どれだけ地域の宣伝となるか
(3)社会的価値
 貧しい人などにどんな意味があるか、地域住民が地域を見直すきっかけになるか
(4)人材育成
 さまざまなノウハウを蓄積して、今後を担える人材を育てることができるか
 
 これって、良くないですか。とってもバランスの取れた評価視点だと思って紹介しました。東京理科大学の伊藤 香織先生が話されたことです。

(3)に関わると思うのだけれど、「Civic Pride」という言葉も、キーワードとして良く出てきました。地域に誇りを持つってことが大事で、そこに景観は大きく関わっているという話だと思う。


2010年9月15日水曜日

龍安寺石庭

売店が片付けを始める頃、龍安寺を訪れた。
靴箱に靴をしまい、ふっと振り返ると石庭であった。
 
「こんなに小さいのか。」
 
これが第一印象である。
広角レンズで捉えた印象が強かったのだろう。よく考えてみれば、東福寺のもの
などと比較しても遜色ない大きさであるのに、そう感じた。
 
「15の石を、すべて眺められるポイントはない。」
そう言われているので、縁側を端から端まで動きながら確認した。すると、奥の
端に近いあたりに15個を臨むことが可能なポイントがあった。15個 を確認する
ことができるのは天上からのみ。石庭は、人の小ささを示す公案なのかも知れぬ。
謂われは大事だが、確認するまで納得しない。そういう者は公案を考える者には
邪魔だろう。
 
縁側に腰掛けていると、隣の大学生とおぼしき4人組が謎かけをやっていた。
「龍安寺石庭と掛けて、しばらくぶりで会った恋人同士と解く。」
...その心は?...
「水入らず。」
 
なかなかにうまいではないか。日本の将来も安泰だ。
 
その程度で。いやいや、「吾、只、足るを知る。」のつくばいを見れば、そのよ
うな横槍を入れる気も起きまい。
 
嵐山電鉄ののんびりした風景に揺られながら、宿に戻った。
 

2010年9月12日日曜日

京都の夏の知恵

ゼミ合宿で京都に来ている。
たまたま宿への道すがらNPOの建物があり、宣伝のチラシをもらった。京都の住
人が京言葉で京都の暮らしについて語るという企画らしい。そこに、 こんな一
節があった。
※あまりにも読めないと思ったので、所々は私も辞書を引きつつ読み仮名を振った。
 
昔の人の夏の工夫。
襖は御簾(みす)へ。縁側との境を葭戸(よしど)に替えて、庇(ひさし)には
真新しい葭簀(よしず)を掛ける。足下もひんやりした網代(あじろ) や藤筵
(ふじむしろ)を敷いたり、電器の傘、額の絵、花器、絵皿、その他の調度品も
みな涼しげなものに替える。照明の明るさもちょびっと落とし、 電球からの熱
気も抑えて、部屋のくらさからも心持ち涼感を醸し出す。
そして、いつも「雑巾は固う絞って」と云われんのに、夏だけは「雑巾はゆるう
お絞りやす」と。「心もち緩めに絞った雑巾で良し土や藤筵を拭いてお くと、
わずかな水分が部屋の温度を下げるんどすな。」
 この後には、「今日の着倒れ。」で、着物を季節に合わせて替えていくという
話題も続いていたのだが割愛。

まったく、細かく細かく、気を遣って繊細に涼を呼んでいたのだなあというこ
と。クーラーがなければ、こういう気遣いが必要になるのだ。スイッチ・ オン
しか考えないのとは違う。
 
坪庭がうまく作用して、微妙に部屋を行ったり来たりする微風を呼び込むのだと
いう研究者もいる。建物を造るときから、季節ごと、日々、いろいろと 考えて
気候風土に適応していた...。
 
体にはともかく、頭にはこちらの方が良かったような気がする。


 

2010年9月5日日曜日

ストリート・ウォッチング 小林茂雄さんの本に関連したイベントの紹介


PDFファイルでのイベント案内。拡大表示されるはず。
→されなかったので、画面キャプチャーでpngファイルにしました。
 

同じ研究室に所属していた私達の間ではコバちゃん、東京都市大学の小林茂雄さ
んが本を出した。

「ストリート・ウォッチング」

町歩き。ちょっとした仕掛けを含めるともっと面白くなるよ、という本である。
普段見過ごしてきたことを、楽しみながら発見していくテクニック満載 の本で
ある。
建築探偵団を若者がやると、こんな感じになるのではないだろうか。

池袋の近く、鬼子母神近辺で実際に町歩きをして発見を楽しんだ後、ジュンク堂
の池袋本店でトークセッション。そういう企画があるとのこと。
ぜひ、参加してみては?
9月23日(木)の夕方開催。

◆ストリート・ウォッチング
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%83%58%83%67%83%8A%81%5B%83%67%81%45%83%45%83%48%83%62%83%60%83%93%83%4F
◆ストリート・ウォッチングblog http://d.hatena.ne.jp/str_watching/