2011年8月25日木曜日

書評:Why Not? エール大学式4つの思考道具箱

Why Not? エール大学式4つの思考道具箱、 阪 急コミュニケーションズ

 今年は制作をやろうという学生があるので、思考法・発想法ということを考える。制作の解答を私が出すわけにもいかないから、側面支援に留まる。 どんな支援があり得るか。
 この本は、デザインをしている人が書いたわけではないが、発想の展開について書いてあるので、ヒントがあるかもしれないと読んでみたのだ。

問題から解決策を探る
(1)大富豪になって考えてみよう クロイソス方式
 何でもできるならどう解決する?
(2)同じ目的を目指すように動機づけする
 他人の痛みを感じるべきじゃないか?
解決策から問題を探す
(3)アイデアを活用できる場を探す
 他のことにも転用できないか?
(4)正反対のことを考えてみる
 逆転したら、うまくいくだろうか?
目的にあわせて問題を解決する

 目次から引用すると、こんな感じだ。
 一般的には、目的に対する解決策を考えるのだろうが、それはこの本のメインパートではない。つまり、新しい発想、ニッチな発想というのは、そう いうオーソドックスな考え方から生まれる可能性は少ないということだろう。

 解決策から問題を探すという発想法が堂々としているのは面白くないですか?
 「ルームキーをやたらな所に置かないように、差し込まないと電気が使えないようにする。」
 こういうホテル客室はよくあるが、その本質「○○しないと不都合が生じるようにすることで、○○以外を選択させない。」という形式に気づいたな ら、それを別の場面に利用できないかという発想法が有効だというのだ。

 本に書かれていることは単純だ。しかし、魅力的な事例に溢れている。それで、「自分が書く本に魅力を付け加えるには、魅力的な事例を集めること が有効だ。」ということに気づいた。それが一番の収穫だったかもしれない。
 うまくいけば、次の本は魅力的なものになるはず。
 

全体のデザイン

建築学会に来ている。
建築学会は研究発表が主体だが、研究協議会、研究懇談会、パネルディスカッ
ションも開催される。私は、後者を選んでしまう性行がある。

□人工過疎地域の生活環境モデル
□空間生命化デザイン

2つのパネルディスカッションに共通していた視点が、「建築を単体として設計
する時代は過ぎた。」ということだった。
図書館を、図書館として設計する。病院を病院として設計する。最高の図書館や
病院ができる。それが従来の建築計画であり、設計者の態度だったとい う認識
があり、それでは不完全だという認識がある。

周辺の景観の中で建築外観を考える。周辺の熱環境に与える影響も考えて建物を
計画する。病院の近くにスーパーを作ることで、老人が買い物しやすく する。
従前から考えられてきていたのだろうが(たとえば、伝統建築の町並みは前者の
事例だろうし、京都の町家は真ん中の事柄の事例だろう。)、それを もっと意
識しようということである。

モノ自体のデザインから、すでにある物、すでに住んでいる人、そういうものと
の関係性とのデザインへ。重点の置き方が変わってきたのだろう。
環境心理的に言えば当たり前のことだが、それが新たな課題として脚光を浴びる
ようになってきたのだなと思った。