2010年1月4日月曜日

作られた長寿大国日本

東北地方で脳溢血による死亡者が激減したのは医療技術の発達よりも冷蔵庫の普
及が大きく関わっているという話を聞いたことがある。保存に塩分を使用する必
要がなくなったことが、医薬品よりはるかに大きな効果があったというのである。
冬場になると脳溢血が原因の死亡者が多かったが、これもだいぶ減少した。これ
はエアコンディショニングがもたらした室内環境の安定が寄与している。エネル
ギーの注入により疾病の顕在化を未然に防いでいるということになる。
 
正月に帰省した折り、入院している父を何度か見舞いに行った。
病院は、エネルギーを存分に使用し、一定の熱環境を維持している。栄養も一人
一人に合わせて必要十分な量を提供する。そうやってベッドの上で人生を全うで
きるようにする。
しかし、父の病室で見た人は、皆、寝たきりであった。皆、何かしら管を付けて
生きている。生命を維持するのに必要なものを、外部から管によって供給するこ
とにより生きながらえている。動き回る自由はなく、今後動き回れるという希望
もない。ベッドの上で、いつか管が抜かれる日を待つだけの人生である。
 
私は、日本が世界第一の長寿大国であることに誇りを持っていた。平均寿命は、
日本の生活の質の高さを示す指標だと思っていた。しかし、それは誤りだったか
もしれない。ただ単に生き長らえている、そう見えてしまういくつもの人生が平
均寿命の値を押し上げているだけだったのかもしれない。
 
彼らは幸せだろうか。もしかするとぽっくり逝ってしまった方が、彼らも、家族
も、費用を負担する社会も幸せだったのではないだろうか。「管」がない方が、
最先端の医療がない方が幸せだった人生もあるのではなかろうか。
医療の現場で彼らと向き合う方々に敬意を抱きつつも、そんな想いを禁じること
ができなかった。

1 件のコメント:

  1. 確かに、寝たきりで意志もなく過ごしている方を見るとそういった思いがよぎることがある。生きていて幸せだろうか…。

    しかし、ご存じかもしれないが、日本は健康寿命も世界第一位だ。
    健康寿命、すなわち日常的に介護を必要とせず、自立して生活していくことができる期間。
    そのことを考えると、日本のことを十分誇りに思って良いのではないだろうか。

    ちなみに厚生労働省は「健康日本21」で、ピンピンコロリ(略してPPK)というモットーをかかげている。
    やはり日本はすごい。

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