2009年10月8日木曜日

「粋」について

臥龍山荘は建物内部は撮影できなかった。庭のあたりから。
 
 
「臥龍山荘」を訪れて
 
ちょこちょこ読んでは挫折を繰り返している「作庭記」の解説本がある。私とし
ては、庭造りの奥義が知りたいわけだが、読む前に何となく予想したように、そ
のような記述はない。形式とその分類が書いてあるだけだと言ったら言いすぎだ
ろうか。庭師でもある著者の言にも、解説があって初めて伝わる内容だというこ
とが書いてある。形式は記述してあるが、その意味合いは先輩庭師と仕事をしな
がら、教えを受けながら体得していくもの、また、そうでないと体得できないも
のとして捉えられてきたのだと思う。
 
「臥龍山荘」は、愛媛県の大洲にある。河内寅次郎という実業家が川沿いの景勝
の地に設けた3,000坪の館だ。一度訪れたいと思っていたのは、そのロケーショ
ンと建物の造りに魅了されるものがあったからである。
親切な受付の女性が見所など説明してくれ、楽しめたのだが、その説明は例えば
次のようなものである。
・春は花筏、秋は菊水というような透かし彫りの題材
・その透かしの見え具合の室内位置による変化
・床の間の一枚板の豪勢さ
・普通と違う、凝った廊下の木の継ぎ方
・飾り釘
・廊下を支える柱の足下は、礎石の形に合わせて柱を削っている
・飾り棚が雲、丸障子を通して入る光が月と見立てたので、違い棚の向こうに掛
け軸が掛かっている
 
こういったことのいくつかは、解説を聞かなければ見逃してしまう事柄であろ
う。だから大変ありがたかったのだが、一方で、良さを説明できないもどかしさ
も感じるのだった。つまり、こういった説明は、おしゃれとは金を掛けることで
あり、しゃれっ気を示すことだという内容になっていて、なぜそれが人の心を打
つのかという造形の質を説明してはいないのだ。
 
たまたま「デザインの生態学」という本を読んでいて、プロダクトデザイナーの
深澤直人が質感とかデザインとかを感じ取るより仕方がないものとして語ってい
たような記憶がある。(今、探してみると、見つからないのだが。)
どうも、経験を重ねて感じ取るセンスを磨くよりないらしい。
つまらない結論だ。何とか打破したい。
うーん。
 
作庭記の解説本・・・図解 庭師が読み解く作庭記、学芸出版社
後藤武・佐々木正人・深澤直人著 デザインの生態学、東京書籍
 
 

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