2010年8月23日月曜日

書評:「若者はかわいそう」論のウソ

前回の書評と同じ棚に並んでいた本。面白かった。
 
昔、機械化が進むと、(1)機械を作れる人、(2)機械を操れる人、(3)機械にはできないことをやる人しか仕事を見つけられなくなる、と考えたことがあ る。現在、仕事は二極化してきていて、そういう創造的な仕事と、そうでない単純作業的な仕事に分かれつつあると言われている。
 
この本では、別の視点から職の構成の変化を導き出している。
(1)為替レートが上がる→ブルーカラーが減る、大規模なサービス業だけ残る
(2)大学生が増える→受け皿の数は変わっていないが、ホワイトカラーになれない者が増える
(3)出生率が下がる→内需が減り続ける(→国内の仕事が減る)
別に、リーマンショックのせいではない。その前から存在した上記3点が就職難を生み出しているという。そして、ブルーカラーを中心とした対人折衝しなくて いい仕事が減少し、折衝しなくてはならないサービス業だけが残った結果、それに適応できない人達がフリーターやニートになっているのではないかという見立 てである。
リクルートで長らく人材活用に携わっていた人なので、そしてデータ分析もしていた人なので、単純なかわいそう論への批判には説得力があった。
 
後半には、筆者なりの解決策がいくつか掲載されていた。「大学を「補習の府」にする」というのもそのひとつだが、中小企業との出会いの場を作り、新卒で必 ず就職すべきだという論が心に残った。
就職難は大企業だけの話で、中小企業の有効求人倍率は3倍以上あるのだという。それなら、中小企業で働く中で、自分の適性とマッチした職場を見いだしてい く方が、大企業にこだわってフリーターでいるより、ずっと幸せに近いのではないか。
 
他にも、期限を切って外国人の就労を認めるなどいくつか提言があったが、興味のある方には是非読んでみてもらいたい。タイトルから感じられるような若者を 突き放す内容ではない。表面的な「かわいそう」に対処していてもダメだ。もっと根本の問題があるのだから、それの処方箋を考えていこうという論である。

扶桑社新書
「若者はかわいそう」論のウソ—データで暴く「雇用不安」の正体

海 老原 嗣生【著】
扶 桑社 (2010/06/01 出版)

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%81%75%8E%E1%8E%D2%82%CD%82%A9%82%ED%82%A2%82%BB%82%A4%81%76%98%5F%82%CC%83%45%83%5C

0 件のコメント:

コメントを投稿