2010年8月19日木曜日

書評:競争の作法 ーいかに働き、投資するか

ここ数日、学校には入れなかったため、近所の大学図書館で仕事をしていた。そこで目にした本。最近の就職難を感じるにつけ、今後の日本経済というのを考え させられるので、手にしてみた。
 
2002年から2007年の景気回復は実感に乏しい。それはなぜか。
ゼロ金利政策が円安を生み、デフレの物価下落を実質的な円安と見なすと、二重の円安となる。それで輸出が好調となった。これが景気回復。
しかし、製造に必要な物資の輸入に金を払い、設備投資に金を使い、国内には資産が分配されなかった。これが実感の乏しさ。
筆者は、これを日本のたたき売りと捉える。しっかり、資産を溜め込むのではなく、外国に持って行かれただけだと考えるのである。それではダメだ。日本を立 て直すには、きちんと経済を成り立たせなくてはならない。
 
その処方箋として、2つを挙げる。
ひとつは、給与の修正である。自分の労働が生み出す利益より多くの給料をもらっているのなら、給与は下がるべきである。そうでないと競争力は保てない。戦 後最長の景気回復期には、労働人口から見ればごくわずかである非正規雇用を絞り、人件費を浮かせていた。その分は、正規雇用の社員が手にしていたのであ る。ほんの少し(筆者の計算では1%程度)の給与減を達成できれば、派遣切りの問題は起きなかっただろうという。
 
もうひとつは、適切な資本活用である。地方の土地の値段は下がり切っていない。だから活用されない。税制を改革して、活用しなければならない状況を創り出 すべきだという。トヨタは世界一を目指して過剰な設備投資を行った。適切に投資していれば、賞与は増え、株主に配当が出ただろう。それは日本を潤したはず だ。

そうやって、適正な競争をすることが財政出動に頼らない(破綻しない)将来に繋がる。
 
私の俸給は、リストが改訂されない限り、定年まで決まっている。そういう給与体系ではダメだと言うことだ。儲ける力が弱まったときには、給与を抑制しなけ れば破綻する。
大学はこれから、そういう時期に差し掛かる。

「きちんとした競争」とその対価ということについて、考えさせられた。
 

ちくま新書
競争の作法—いかに働き、投資するか

齊 藤 誠【著】
筑 摩書房 (2010/06/10 出版)

233p / 18cm
ISBN: 9784480065513
NDC分類: 332.107

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