2010年4月12日月曜日

渋谷コロキウム「光文化と都市」を聞いて

東京都市大学の小林茂雄さんから標記シンポの案内をもらったので、出掛けてみた。
小林さん自身も講演をし、その内容は、これまでと比較しても凄みを増していた
と思うが、6月に本を出す予定とのことであるから、その機会に触れることにし
て、もう一人の演者、石井リーサ明理さんの話から考えたことを。
 
「西洋人はオレンジ色の点で照明し、明暗を付ける。東洋人は白い面で照明し、
ぼんやりと照らす。」エッセンスだけを極端にディフォルメすれば、こうなろう。
ゴシック教会の照明はフライングバットレスだけを照らして奥行き感とコントラ
ストを作るのに対し、天守閣のライトアップは壁面を全体に照らす。そういう洋
の東西の違いの話。フランスを拠点に、日本やシンガポールでの仕事もこなして
いる演者の照明文化に対する考察である。
 
彼女が、先年受賞した照明計画は修道院の照明なのだが、そのアプローチは東洋
的。壁面をぼんやりと照らす照明なのだ。ならば、東洋で西洋的な照明が、西洋
で東洋的な照明が受け入れられる可能性もあるのではないか。
 
彼女が別の方の質問に答えて言うには、「シンガポールにフランス人がデザイン
したコントラストの強い照明があるが暗がりから不安を感じる人がいる。だか
ら、その地域の人を知ることは重要だと思うが、自分が照明デザインをするとき
には、まず、照明する対象をどうライティングしたら魅力を引き出せるか考え
る」とのこと。
これが答えであるように思う。
つまり、いくつかの手法があって、その場面・状況に合うものがある。経験や個
性によって思いつきやすさはあるだろうが、それが文化差と取られることはあろ
うが、世界的な共通性というのも、割に大きいのではないかということ。慣れて
くれば、その魅力に気づいてもらえる可能性もあるのではないかということ。
このあたりは、小林さんの「暗さの魅力」の話とも通ずるような気がする。最初
は気づかなかったものに気づく過程。
 
こんな話を、デザインに興味のある学生にしてみようか。
 

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